老々介護について想うこと
令和7年11月、東京地裁よりある判決が言い渡されたことが、マスコミにより報道されました。
内容は『老々介護の末、102歳の母親を殺害した罪で起訴された71歳の娘に対し、検察側の懲役8年の求刑に対し、懲役3年・執行猶予5年の判決が言い渡された』というものであります。(年齢は事件当時)
この判決の中で裁判長は「長年の介護で、疲労を蓄積させていった中で急激に介護の負担が高まり、被告の対応能力を超えたことにより冷静な判断が出来なくなったことによる衝動的な犯行」として弁護側の主張を全面的に認めた判決となりました。
今回の事件の全貌については私どもの知る由もないことであるが、足腰が弱く1人ではトイレに行けないことに加えて認知症の症状もあった母親を12年間ほぼ1人で介護する日々が続いていた最中、事件発生1週間位前からは毎日10分おきにトイレに連れていくようになり、腰を痛めていたそうです。
そんな中、母親がベッドから転落する事故が起こったが腰を痛めている自分1人では持ち上げることが出来ない為、消防に助けを求めたが、断られたそうです。その時本人は「この世の中に自分1人しかいなくて自分1人でどうにかしないといけないと思い詰めてしまい、殺すしかないという考え方になってしまった」と動機を述べていたそうです。
介護の現場に身を置く者の1人として、今回の事件について想うことを述べさせて頂きたいと思います。
人を殺めることはいかなる理由があろうとも許される事でないことは異論のないことではありますが、12年もの長きにわたりたった一人で高齢の母親の介護をしてきたことを思うと、その大変さは想像を絶するものがあります。
惜しむらくは、今回の事件が起こる前に何か良い方法がなかったのかと思います。
身内に介護が必要となった者が出てきた時、何処に相談したら良いのか、あるいは介護保険の利用方法等は大半の人は知らないのではないかと思います。
よって、各市町村はもっと市民に内容を説明すべきではないかと思います。
今後は、介護施設に入所する前段階(要支援、要介護認定を受ける前)の方々を受け入れる施設の設置や自宅で介護をしている方々が気軽に相談出来る窓口を増やすべきではないかと思います。
我々も、こういった方々の相談に乗れるよう努力して行く所存であります。
最後になりますが、今回の様な悲しい事件が二度と起こることのない社会になる様願っております。
(職員K)
